2006年11月

裏MotorsportsFlashback。
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巨漢のロック・シンガー、ミートローフの"Bat Out Of Hell"シリーズ、日本語では『地獄のロックライダー』シリーズですが、その最新作です。

<ここから昔話>
第一作は77年。世間的にはオサーンの部類に属する歳になった俺も、さすがにこれはリアルタイムでは聴いていません。初めて聴いたのは高校2年生の時で、まだLPレコードでした。きっかけは、何かの雑誌で読んだ「ロック・オペラというジャンルがあるとすれば、その代表作は『オペラ座の夜』や『Tommy』と並んで、この作品が挙げられる」と紹介されていたこと、そしてプロデューサーとコンポーザーでジム・スタインマンの名前があったことですか。
そう、ミートローフの名前は知らずとも、ジム・スタインマンの名前は知っていました。というのも、あまり大声で言えないけれども実は個人的には生涯ベストムービーの一本と言っていい映画『ストリート・オブ・ファイヤー』(84年アメリカ/ウォルター・ヒル監督作品/出演:マイケル・パレ、ダイアン・レイン、ウィレム・デフォー、リック・モラニス)の中で使われる、テーマソングと言っても良い二曲を手がけた作曲家だったからです。
で、実際に聴いてみると、『地獄のロックライダー』は、先に挙げた『オペラ座の夜』や『Tommy』なんかと同種のもの、として捉えるには少々無理があるんじゃないかと思いました。
『オペラ座の夜』も『Tommy』も、それぞれQueen、The Whoというバンドのオリジナル・アルバムとして、彼ら主体で作成されたものであり、さらに、アルバム自体はコンセプト・アルバムではあるけれども、彼らのディスコグラフィを俯瞰するにあたり、重要な位置を占めてはいるものの、決してバンドの歴史の中で突出して異色なもの、という訳ではありません。
一方の『地獄のロックライダー』ですが、これは「ミートローフ」というシンガーのアルバムという体裁をとっているものの、実際のところはジム・スタインマンがミートローフという素材を使って作った、「作曲家の作品」という色彩が強いんですね。
アルバムの中身は、まさに「ロック(の楽曲と演奏・唱法を使った)オペラ」。「オペラ的手法を取り入れたロック・アルバム」ていうよりも「ロック的な音で展開されるミュージカル」というか。この後、ジム・スタインマンがブロードウェイや映画音楽にその才能を発揮するのもうなずけます。

この作品、日本ではさして大ヒットはしませんでしたが、アメリカ、ヨーロッパでは大ヒットでした。にも関らず、それ以降はこれほどのヒット作には恵まれていません。プロデューサーや作曲にジム・スタインマンを迎えた作品もいくつかありながらも、内容・セールス共にこれを越える作品は生み出せないままでした。
で、1993年、確かまだ俺が社会人になってそれほど時間が経っていなかった頃ですが、満を持して発表された『地獄のロックライダーII~地獄への帰還』をリリース。これも一作目に劣らぬ傑作でしたが、何より驚いたのは、その曲調はもちろん、音の手触りも含めて前作から15年以上経っているのに、悪く言えば全く進歩がないところ。まさに『地獄のロックライダー』の世界を90年代に蘇らせた、というか、この音が90年代である必然性ゼロだったのには、当時大笑いしました。自家用車のCDチェンジャーに常備していたなぁ。懐かしす。
</昔話>

まあミートローフといえば『地獄のロックライダー』、そして『地獄のロックライダー』といえばジム・スタインマンという、この取り合わせは、俺を含めた一部の人には無敵なんですな。
そして今年、なんと2006年も暮れようかという、この21世紀の世に、まさか『地獄のロックライダー』の新作が出てこようとは、さすがに思ってもいませんでした。
国内盤はまだのようですが、タワーレコードで既に店頭に出ていた輸入盤を見たとき、一瞬気を失ってしまい、あとのことはよく覚えていませんで、気がついたら家に帰ってヘッドフォンを掛け、大音量で聴いている自分が・・・

Bat out of Hell III: The Monster Is Loose

  1. The Monster Is Loose
  2. Blind As a Bat
  3. It's All Coming Back To Me Now
  4. Bad For Good
  5. Cry Over Me
  6. In The Land of the Pig, The Butcher Is King
  7. Monstro
  8. Alive
  9. If God Could Talk
  10. If It Ain't Broke Break It
  11. What About Love
  12. Seize the Night
  13. The Future Ain't What It Used To Be
  14. Cry To Heaven

ジャケットはいつもの感じで、蝙蝠の化け物が前二作より大きめに描かれ、前作ではその蝙蝠にウェスタン・ラリアートをかまそうとしていたロックライダーさんが、今回は短剣を手にして蝙蝠と対峙しています。
邦題はどうなるんでしょうか。多分『地獄のロックライダーIII』になるのは確実として、The Monster is Looseは・・・「獣は解き放たれた」とでもするか。「放たれた獣」・・・ちょっとセンスないな。

◆ジム・スタインマンの不在

ところで、このジャケットを良く見ると、"Song by Jim Steinman and Desmond Child"と記載されています。
ここでデスモンド・チャイルドがジム・スタインマンと同等に扱われているのを見て、意外に思う人もいるかもしれません。俺も意外でした。さらにライナーノーツを見ると、なんとアルバム全体のプロデューサーとしてクレジットされているのもデスモンド・チャイルドなんですね。
つまり今回の『地獄のロックライダー』は、デスモンド・チャイルドがメインのサウンド・クリエイターであり、ジム・スタインマンはあくまでも楽曲提供者にしか過ぎないわけです。
ただ、このシリーズをここまで主体的に牽引してきたのがジム・スタインマンであることは疑いのない事実であり、ライナーノーツの裏表紙にも
"FOR THIRTY YEARS OF FRIENDSHIP AND INSPIRATION,BAT OUT OF HELL III IS DEDICATED TO JIM STEINMAN"
と書かれてもいます。
実際はミートローフとジム・スタインマンの間で、『地獄のロックライダー』の商標?を巡って一悶着あったようですが。(Bat out of Hell III: The Monster Is Loose - Wikipedia, the free encyclopedia)
察するに、ミートローフ側が、もうそろそろまた『地獄のロックライダー』やろうぜ、とジム・スタインマン側を突っつき続けて幾年月、『地獄のロックライダー』の名を冠するに足るクオリティの曲が揃わなかったんでしょうか、なかなか重い腰を上げないジム・スタインマンに痺れを切らせたミートローフがデスモンド・チャイルド一派を起用し、見切り発車でアルバムの製作に入ったものの、『地獄のロックライダー』の商標権を押さえていたジム・スタインマン側がこれに反発、訴訟問題に発展してしまった、と。
最終的に本作のみミートローフ側が『地獄のロックライダー』の名前を使ったアルバムを出すことをジム・スタインマン側が了承して両陣営で手打ちがされ、ジム・スタインマンもやむなく何曲か既発表曲を提供した、というところでしょうか。
ちなみに全14曲中、ジム・スタインマンのペンによる曲は7曲(3、4、6、10、12、13、14)。これら7曲は全て、ジム・スタインマン一人の作詞・作曲によるものです。
対してデスモンド・チャイルドの曲は6曲(1、2、7、8、9、11)。興味深いのは、この6曲全て、誰かとの共同作曲という形をとっていることです。
ライターとして起用されている主な面子は、

ニッキー・シックス
言うまでも無くモトリー・クルーの音楽面でのリーダー。モトリーの代表曲の殆どはこの人のペンによる曲(いやペンを使って曲を作っているのかどうかぁゃιぃですが)。
ジョン5
マリリン・マンソンのバンドのギタリストで、自身のソロもあり。
ジェイムス・マイケル
作曲家というよりもアラニス・モリセットのプロデューサーとしての方が有名かも。モトリーやジョン5のプロデュースもやってるから、そういう人脈もあるんでしょう。
ダイアン・ウォーレン
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!デスモンド・チャイルドと並ぶ80年代後半~90年代のアメリカのチャートを荒らしまわった、ロッカ・バラード専門作曲家!エアロスミス(アルマゲドンの主題歌)、シカゴ(ルック・アゥエイ)、マイケル・ボルトン(タイム・ラヴ・アンド・テンダネス)、スターシップ(マネキンの主題歌)・・・ほかボン・ジョヴィやハート、バッド・イングリッシュといった売れ線系ポップ・ロック・バンドからホイットニーやセリーヌやベリンダ姐さん、シェール婆さんなどの女性ヴォーカル系に至るまで、幾多の名曲を提供しているおばはんですね!
ホリー・ナイト
さらにキタ━━━━━━( @@)━━━━━━!!!!!デスモンド・チャイルドにダイアン・ウォーレンにホリー・ナイト・・・この面子は、こういった文脈で語れる音楽においては、最強ともいえる取り合わせじゃね?
マーティ・フレドリクセン
エアロスミス復活に、音作りの部分で多大な貢献をしたプロデューサー。いうまでもなく復活エアロにはボブ・ロックと共に、デスモンド・チャイルドやダイアン・ウォーレンも大きく関っていましたね。
いやーすごいメンバーですね。『地獄のロックライダーII』の時に、まったく恥ずかし気もなく15年以上前のサウンドそのまんま90年代に出してきたのにびびりましたが、80年代~90年代のヒットチャート常連コンポーザーが大挙して、産業ロック全盛期の音を21世紀に出してくるとはいやはや。
デスモンド・チャイルド自身、優秀な作曲家ではあるんでしょうが、それよりも優秀なプロデューサー(むしろ優秀なサウンド・コーディネイターとでも言ったほうが良いかもね)であり、曲のクオリティを高めるために積極的に外部ライターの導入を図っているとも言えるし、さらに言うと、ジム・スタインマンの作る強い個性を持った楽曲群だけで一枚のアルバムを作ってしまうと、さすがに新しいファン層の獲得は難しい、という判断もあったでしょう。かといってデスモンド・チャイルド単独でジム・スタインマンの楽曲群に対抗し得る楽曲群を産み出せない、という判断もあったかもしれませんね。
クリエイターとしての自我よりも、そういうバランス感覚を優先させてしまえるのが、デスモンド・チャイルドらしいとも言えますがね。だからこそ80年代後期~現代に到るまで、アリス・クーパーやエアロスミスのようなビッグ・ネームからも信頼され、レコード会社が大金掛けて一発売り出したい中堅どころのアルバムでも重宝されている所以ともいえましょう。

1曲目、『地獄のロックライダー』シリーズらしいおどろおどろしいイントロに導かれたかと思うと、いきなりメタリカとグランジによって普遍化された現代ヘヴィメタリック・ギターサウンドが炸裂し、前二作との違いをはっきりと感じさせます。
ただ、決してアルバム全体がこの曲の手触りで統一されている訳ではありません。そりゃそうだ、ジム・スタインマンの曲をこんな調子で演られちゃたまらんわい。

2曲目、1曲目では欠けていた『地獄のロックライダー』で常に重要な役割を演じてきたピアノの音が流れ出し、ほっとします。
曲の盛り上げ方、大仰なコーラスの使い方などはジム・スタインマンの音を忠実になぞっており、決して物まねとかではなく、デスモンド・チャイルドが過去二作、そしてジム・スタインマンに対して大いなるリスペクトを払っていることが窺い知れる音になっています。
ちなみに、この曲におけるミートローフの"Love is blind"の"blind"の"L"の発音、いかにも普通の人より舌が長そうな(もしくは唾液の分泌量が多そうな)、べたついた「ぶいーんど♪」を聴くと、「あぁミートローフだ、ロックライダーだ!」と思って嬉しくなってしまうのは俺だけではないでしょ。

3曲目はジム・スタインマンの曲。オリジナル・シンのアルバムに提供した曲のカバーらしいんですが、残念ながら俺はオリジナルは未聴。こういうのを聴くとだなあ、またこのオリジナルを聴きたくなっちゃうじゃんか!
また、この曲は、かのセリーヌ・ディオンもカバーしており、こちらはシングルにもなっていたようです。残念ながらこちらも未聴。うーん。
曲調は当たり前ですがジム・スタインマン節全開、デュエットによる大袈裟極まりないバラードです。

続く4曲目もジム・スタインマンの曲で、出た当初『続・地獄のロックライダー』とも言われていた彼名義のソロアルバム『Bad For Good』が初出。イントロのギターはクィーン的なギターハーモニーだと思ったら、ブライアン・メイが弾いてました。米英ロック・オペラの大家が手を組んだというシチュエーションに萌えますね。

5曲目はダイアン・ウォーレンおばさん単独作曲のバラード。今回新たに参加したライター陣の顔ぶれを見た時点で想像はできるんですが、やっぱりバラードが多いですねえ。
6曲目は再びジム・スタインマン。バットマンのミュージカル用に書いた曲だったようですが、過去二作でも必ずあった、「ダークなメロディでアルバムのドラマ性を盛り上げる曲」の役割を演じています。
この曲ではゲスト・ギタリストで、スティーヴ・ヴァイが参加してるんですが、先のブライアン・メイと違い、ヴァイ独自の爬虫類系の変態ソロが炸裂しているわけではありません。

7曲目は8曲目の前奏曲ともいえる短めの曲。オペラ調のコーラスでおどろおどろしい雰囲気を盛り上げ、八曲目に繋げます。
そして8曲目。この流れはアルバム中の白眉ともいえる部分で、デスモンド・チャイルドを始めとしたライター陣が渾身の「俺達の新たなる『地獄のロックライダー』」を作ったとも言えます。
オペラチックなコーラス、自己主張の強いピアノ、丸っこいギターサウンド、必要以上に曲を大仰に盛り上げるストリング&ブラスサウンド・・・まさにスタインマンと過去二作のスタイルに則って作った名曲といえましょう。

9曲目、これもデスモンド・チャイルドのペンです。前曲で思いっきり盛り上げたのに対し、こちらは比較的静かな感じで始まります(サビではやっぱり大袈裟に盛り上がりますが)。
10曲目は再度ジム・スタインマンの曲に戻ります。映画のサントラ用に提供した曲のようですが、これも6曲目同様に、どちらかというとヘヴィ&ダーク寄りなメロディで、次につなぐ感じです。

11曲目、デスモンド・チャイルドの曲。これはもう、7~8曲目と同様、アルバムの中核を成すキラーソングですね。
さわやかなギターのカッティングに続いて、いかにもアメリカンロックらしいピアノが入ってきて、明るくアップテンポな歌メロが入り、90年代からミートローフのツアーにデュエット要員として帯同しているパティ・ルッソとのデュエット。
存在感たっぷりのピアノ・サウンド、対照的に控えめな、丸っこいギター・サウンド、そして迫力のあるパティの女声ヴォーカル、そこに暑苦しいミートローフのヴォーカルが合わさり、実に『地獄のロックライダー』的な世界が展開されます。メロディ、アレンジとも申し分ないですね。
12曲目、ジム・スタインマンがミュージカル用に書いた曲。いかにもミュージカル的というか劇伴音楽的でドラマティックなメロディ、かつシンフォニックなアレンジが施されています。9分という、アルバム中最長の曲でもあり、組曲風に曲調が何回か変わり、9分という長さを全く感じさせないところは、ジム・スタインマンの力量を改めて感じさせるものであると共に、このスタインマン調全開の曲をいかにもそれらしく仕上げるのが嬉しくてしようがない、というデスモンド・チャイルドの顔が目に浮かぶようです。

アルバムは12曲で終わってもいいんじゃないか、と思えるくらいの盛り上がりを見せる12曲目に続いて、13曲目と14曲目、共にジム・スタインマンの、わりと静か目の曲を二曲続けて、聴き手のクール・ダウンを図ってくれます。

以上トータル14曲、ジム・スタインマン不在で『地獄のロックライダー』を作る、という、ある意味危険な賭けに出たミートローフですが、デスモンド・チャイルドによる過去二作を十二分に尊重した仕事振りは、ジム・スタインマン不在の穴を埋めて余りあるものだと言えましょう。
個々の楽曲を見ると、例えば1作目の1曲目や2作目の1曲目という、アルバムを聴き始めた者全てを導入部でノックアウトしてしまうような超強力な楽曲がありましたが、今回はそこまでぶっ飛んだ超弩級の名曲がないのが問題といえば問題ですがね。
でもデスモンド・チャイルドが主導権を握ったことによって『地獄のロックライダー』がクォリティダウンした、と言われないよう全力を尽くしたとも思える超力作。既発表曲とはいえジム・スタインマンの曲を織り交ぜることで過去二作と同様の空気を醸し出すことにも成功しており、少なくとも過去二作が好きな人や、80年代後半から90年代にかけてのモトリー・クルーやボン・ジョヴィ、大きな声では言えないが実は産業ロック路線のエアロスミスやハートなどが密かに好きな人などは、買って損はないどころか十分満足できるものだと言えましょう。てか買え。

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タグ : ミートローフ ジム・スタインマン デスモンド・チャイルド 地獄のロックライダー

何度かこのblogでも取り上げたこともあるアストゥーリアスですが、本当にメジャーデビュー(正確には大昔にアルバムがキングレコードから発売されていたので「再デビュー」と言うのが正しい)しちまいました!
バンド名も「アコースティック」を接頭語としてつけて、「ACOUSTIC ASTURIAS」というのが正式名称になっているようです。まあ普段「アコアス」と呼ぶことが多かったし、この呼び方がしっくり来ますかね。エレクトリックなアストゥーリアスも秋のポセイドンフェスで限定復活したみたいだし。
前回こちらのエントリでも書きましたが、
(前略)今後出るであろう新作(なんかメジャーレーベルから出すとか息巻いています、いや息巻いてはいないですが、本当に出るんだろうな、をい)が実に楽しみになります。
これは今年の7月15日に沼袋のライヴハウスで行なわれたプログレイベントのステージにアストゥーリアスが立った際に(いや立っていたのはヴァイオリンの伊藤さんとクラリネットのかおりんの二人で、あとの二人は座っていましたね、って屁理屈言うんじゃない!)リーダーの大山曜さんが
「アルバムのほうも、なんとかメジャーレーベルからのリリースができそうで・・・」
と言ったことを書いていたんですが。
まさか、メジャーもメジャー、大メジャー、あの浜崎あゆみや倖田來未や大塚愛やELT(決してELPではない)と同じディストリビューター、avexからのリリースですよ。
このページなどを見ると、「大人のためのエイベックス」と銘打たれていたりと、avexの中でも比較的マニアックなミュージシャンが揃っている「avex io」というレーベルからのリリースのようです。そういえば今年の夏ごろにあの渋さ知らズがavexからメジャーデビューを果たしており、これもびっくりしたんですが、よく見ると渋さ知らズも同じく「avex io」からのリリースなんですねこれが。他にも吉田美奈子だの松本晃彦(『踊る大捜査線』シリーズの音楽作ってる人)だの林英哲(鬼太鼓座創設メンバーの一人)だの谷村新司だのといった面々が名を連ねるレーベルです。

ということで、
「avexからのリリースなら、もしかしたら広島でも発売日に買えるかも(0゚・∀・)ワクワク テカテカ」
と、11月8日、仕事が休みなのをいいことに、ダイヤモンドシティソレイユの中にあるフタバ図書TERAに行ってみました。 敢えてタワーレコードではなくポピュラリティの高い品揃えしかしていないであろうフタバに行ったのは、avexリリースという「正の要素」と、ジャンルが邦プログレであるという「負の要素」のどっちが勝つか世紀の対決を見届けるためですね(「負」は言いすぎだろ「負」は!)。 で、いざCDショップに到着して足を踏み入れる段になって、はたと考え込むことに。果たして今のアストゥーリアスの音楽性からすると、どのコーナーに置いてあるんだろう・・・?
普通に考えて「日本のプログレ」かな。いやそんな変なコーナーがあるわけねえだろ、タワーの広島にだってないぞそんなの。
それじゃ・・えーと「日本のジャズ」かな。いやいくらなんでもジャズじゃないよな・・・と思いつつ一応ジャズコーナーを見るが、やっぱり置いていない。
あ、イージーリスニングじゃあないか?そういやポール・モーリアも氏んだことだし、イージーリスニングというジャンルが今再び注目されてるから、まさにタイミングとしてはいい時期に氏んで・・・じゃなかった、いい時期にアストゥーリアスの新作が出たってことかあ!(不謹慎)・・・てことでイージーリスニングのコーナーを探すも、コーナー自体がありません。そういえばイージーリスニングっていうのは15年ほど前に「ニューエイジ」っていう呼び名に変わったんだった、とニューエイジの棚に向かうも、やっぱり置いてない。その隣がクラシックのコーナーだったのでそっちも探してみたけれど、やっぱりない。
うーんこれは・・・avexだのメジャーだの言っても、やっぱり広島じゃ置いてないのかあ・・・とがっかりしつつも、一応聞いてみようと思って、店員の若い女性を探す(いや別に若い女性じゃなくてもいいだろ)。

俺「あのー、今日発売のアストゥーリアスの新作ありますか?」
若い女性店員「はい?」
俺「アスト・・・じゃあないや。アコースティック・アストゥーリアスです。avexからの発売で・・・」
若い女性店員「あ、はいはい。ありますよ、こちらどうぞ・・・」
俺「(すげ!やっぱり店員さんはプロだな)」と、ついて歩く。連れて行かれたのは・・・
若い女性店員「はい、こちらですね」と辿り着いたのは「J-POP」のコーナー!
俺「(じ、J-POPかよアストゥーリアスがwしかもアコースティック編成でwww)おぉあった、さすがavexだ」

ということで、正と負の戦いは、見事に正が勝利を収めました。パチパチ

Marching Grass On The Hill

  1. WATARIDORI
  2. Marching Grass on the Hill
  3. 紅江
  4. Waterfall
  5. Classic Medley
  6. Coral Reef
  7. 神の摂理に挑む者たち
  8. Bloodstained Roses
  9. Rogus
  10. Luminous Flower
  11. Adolescencia
  12. Woman of Ireland
CDの帯には「超絶技巧アコースティック・ヒーリングミュージック」という矛盾しているような気がしないでもないたたき文句が打たれており、ジャケットデザインもなんか牧歌的でありながら不気味さをも感じされる、素晴らしくプログレっぽいものになっています。
クレジットされているメンバーはヴァイオリンに夏から参加の伊藤恭子さん、クラリネット他リコーダー等がかおりんこと筒井香織さん。光速運指の超絶技巧ピアニスト川越好博さん、そしてギターが大山ヨウ様。つまり夏の沼袋のライヴと同じですが、あくまでもこれは現メンバーということで、実際のレコーディングは、基本的にみさりんこと北辻みささんがヴァイオリンを弾いているようですね。
ライヴよりレコーディング重視の北辻さんらしく、楽曲本来の持つキャラを活かしきった非の打ち所の無いパーフェクトな演奏を聞かせてくれます。ライヴでのみさりんは、どの曲を演るときも、聴く側にまで極限の緊張感を強いるようなテンションの高さがあるんですが、レコーディングでは見事に曲のキャラに合わせてそのテンションをコントロールしていますねえ。

以下、各曲ごとにぐだぐだと感想を・・・
一曲目は最近のライヴでもよく演奏されていた曲で、川越さんの穏やかなピアノによる導入に始まり、四人による、比較的穏やかですがそれなりに緩急のあるアンサンブルが続く曲。チェンバーロックというより、むしろ「ロック」が外れた「チェンバー・ミュージック」そのものでありながらも、メロディラインといくつかのブレイクが大山ミュージックを強く感じさせる、メジャーデビューアルバムの一曲目に「名刺代わり」として(適度に)一発カマすのには最適と思えるものです。
二曲目、NTT東日本のLモード(あーそんなのあったよね!懐かし!てか死規格だな、都電はE電!とかと同じ、いやちょっと違うか)のCMソングとして30秒の曲として作ったもので、彼ら(というか旧アストゥーリアス時代)の代表曲の一つ『Ryu-Hyo(流氷)』をイメージさせる穏やかな「癒し系」と呼ぶに相応しいメロディ、この序盤のメロディがCMに使われた部分ですが、これがライヴの度にどんどん長くなり、所謂プログレ色が強まっていった結果がこのアルバムに収録されているヴァージョンです。俺個人としては、この曲はアコアスのベストチューンですから、これがアルバム収録されたことが一番嬉しいですねえ
三曲目、「べにこう」と読みます。これは吉祥寺スターパインズカフェでの、北辻・藤本のヴァイオリニストのダブルキャストでのライヴのときにはヴァイオリンとピアノだけのデュオで聞かせてくれた曲ですが、なんと今回びっくりのヴォーカルチューン。さすがにメジャーレーベルからのリリースということで、一曲くらいヴォーカル入りもなくちゃ!みたいなことをヨウさまが書いていますがね、それならもうちょっとこう、一般的に知名度の高い人を使ってるのかと思ったら同じゲーム音楽村(もしくはアニソン村)の住民いとうかなこですかそうでつか。
四曲目は沼袋のプログレ祭でも演った曲。かなり速い曲で、生ヴァイオリンもクラリネットも、温かみのある穏やかな音を出す楽器、というイメージとは正反対の、スピーディかつクールで実にかっこいい演奏を聴かせてくれます。ヴォーカルチューンとか入れて一般受けを狙うのはいいですが、こんな曲を堂々と収録してちゃ努力が無駄になるというか、これこそがファンの求めるものではあるんですが。とにかくかっこいいです。まさにチェンバーロックで、これをチェンバーロックと言わずして何をチェンバーロックというんだ、という。
五曲目はクラシックの名曲を繋げたメドレー。かなり笑えるアレンジに仕上がっています。このままライヴで聴いたら手を叩いて笑うところですか。去年の夏に大阪で見た高円寺百景の「クラシック・メドレー」を思い出しましたよ。クラシックのカバーとしてはアレに匹敵する「バンドの持つ特色を活かしきった選曲とアレンジ」ですよこれ。いや生来「生真面目」が服着てステージでギター弾いてるような大山さんが、果たして聴く側に「笑い」を期待したのかどうか甚だ怪しいところではありますが、もう実に彼ららしいアレンジと選曲に、俺は勝手に大笑いしています。ちなみにここでもメジャーレーベル発売を意識したのか、今年の2月に荒川静香で一躍有名になったプッチーニの『トゥーランドット』で締め括られます。
六曲目は、ちょっとした箸休めともいうような穏やかな曲です。この曲などを聴くと、「癒し系プログレ」という呼び方もむべなるかな、という気がします。なによりもかおりんの息継(ry
    _, ,_  パーン
 ( ‘д‘)
  ⊂彡☆))Д´)
七曲目は、かつて「Tempters of Providence」とも呼ばれていた、これもライヴではお馴染みの名曲で、かおりんのクラリネットとみさりんのヴァイオリンによるダークでハードなフレーズの応酬はこのアルバムの白眉です。
八曲目は多分俺はライヴでも聞いたことがない曲。ある意味アストゥーリアスの世界観とちょっと離れた、かなりヴァラエティに富んだアレンジで飽きさせませんが、逆にアレンジの楽しさで聞かせるだけで、楽曲本来の持つパワー的にはこのアルバム中で一番弱いという印象。
九曲目は、キング時代の旧アストゥーリアスの代表曲の一つでもあるローガス。名曲ですがこれをアコースティック編成用にアレンジするのはかなり難産だったようで、彼らのサイトにある過去のレポート群を読むと、この形になるまでにかなり四苦八苦した様子が窺い知れます。とはいえ、出来上がったのは見事なまでにアコースティックでありながらロックしており、これも国産チェンバーロックの代表的楽曲の一つと言っていいでしょう。
十曲目は、吉祥寺スターパインズカフェでのライヴでもアイリッシュ・ハープの坂上真清を加えて演奏された曲。今回アルバムにも参加し、アイリッシュ・ハープの独特の音色を聞かせてくれます。楽曲も坂上さんをフィーチャーし、かなりケルト色の強いものになっています。
十一曲目は、前作ミニ・アルバム『Bird Eyes View』一曲目に収録されていた、アコアスの代名詞とも言える名曲。今回、新録した訳ではなさそうですが、新たにミックスダウンし直し、メジャーレーベルから再度世に問う、といった感じでしょうか。いや名曲だわこれは何度聴いても。新ミックスは、やっぱり名のあるエンジニアがやったからか、若干音の奥行きが深まった感じがします。
最後の曲は、またまたケルト色が強いというか、100%ケルティック・トラッドです。ゲーソンの女王いとうかなこが再度参加し、スキャットを聞かせますが、これだけはヨウ様の「ほれ、こんなんもやろうと思えばできます」的なものを感じるのは俺だけかね?まあボーナス・トラックみたいなものと思いましょう。

とまあ、既発曲・未発表曲・新曲を交えた60分超のフルレンス・アルバム。ライヴを見るたびに新作アルバムが待ち遠しかったファンにとっては、砂漠のオアシス状態ですね。えぇ、iPod nanoに入れて聴きまくりですよ。また晩秋の寒空に合うんですよこれが。レコ発ライヴも行きたかったなあ。レコ発ツアーってことで広島に来ねぇかなあ。来ねぇだろぅなあ。あああ。てか来てくだちいおながいしますm(_ _)m

<追>
一部、某所よりのご要請に基づき表現を削除及び改変しますた。

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