前作『父親達の星条旗』よりも考えさせられるところが多かった映画だったのはやっぱり日本人だからかもしれませんが、NBORやLA批評家協会賞をバカスカ獲っているところからも、こっちの方がアメリカでの評価も高いんですかね。
明らかに「反戦映画」だけど、決して声高にイデオロギーを主張するものではなく、なんというか「戦争は愚かなものだ」と心底感じさせるものでした。デートには向いていませんが、みんなに見てもらいたい作品ですね。
『犬神家の一族』
ミスキャスト。誰がって、松嶋菜々子。身長が高すぎるっていう部分もそうだけど、何よりもちょっと年齢が・・・あと5歳若ければ、身長云々はさておき、それなりにはまっていたかもしれませんが。
ただ、これは特に20代以下の人は見るべきでしょう。所謂撮影所時代の巨匠の最後の一人、と言ってもいい市川崑の大作です。
出演者がどんなに大御所だろうと、製作サイドが何を言おうと、この作品は市川監督の作品。プロデューサーの映画ではなく、『監督の映画』なんです。
各種媒体に出ている撮影中のエピソードなどを読むと、もうこんなわがままを通せる監督は、この人が最後なんじゃないかと。
松竹には山田天皇がいますが、どちらかというと山田洋二が役者の芝居を写しとるタイプなのに対して、市川崑は『映像作家』。
今作でも徹底的に影の演出にこだわった形跡が見て取れます。
今後、こういう日本映画はもう作られないかもしれません。
その意味で、若い人はリアルタイムで「撮影所時代の最後の巨匠」が「拘りぬいて作った大作」を見られる最後の機会、かもしれませんから、是非見てください。
『007/カジノ・ロワイヤル』
ダニエル・クレイグがボンド・・・っていかがなものか、と思ったけど、この作品の設定は殺しのライセンスを取得する前の話であるからして、多少粗野な感じがするのも「若さゆえ」ということで。
純粋な正統派スパイ・アクションとしても上出来、007の水準は無論軽くクリア。
ただ、このシリーズ、ボンド役が替わった節目の作品は今までも水準以上のものだったから、今後に過大な期待はしないよ。
『パプリカ』
今敏監督の新作は、今までの彼の作風を踏まえた上で、最もエンタテイメント色が強いものですね。
脚本、作画ともにかなりレベルの高いものになっており、このレベルの作品が普通にスッと公開される日本という国、所謂ジャパニメーションはまだまだ世界トップレベルだと関心します。
ただ、個人の夢が現実世界を侵食するという話(正確にはもうちょっと複雑ですがまぁ思いっきりはしょって言うとそういうこと)については、もうマトリックスとかで使い古され過ぎたアイデアで、正直筒井の原作がいくら93年の発表だからって、今の世に映像化するとしたら、ちょっと手垢にまみれた感は否めないのが残念っちゃ残念ですが。
声優に、昨今の劇場用アニメーションでは当たり前になっている「俳優」ではなく、専業の「声優」を使っている点もいいですね。林原めぐみの代表作の一つと言えましょう。言っちゃあなんだが、「俳優さん」たちに、この映画での見事な二役は務まりますまいて。
お勧めできるのは、20代後半以上で、非ヲタの大人の人で、かつアニメに変な抵抗感が無い人(ヲタは黙ってても観にいくでしょ)。
『NANA2』
世の中には3種類の映画があって、見る価値が「ある映画」「ない映画」「見ない方がよい映画」・・・これは残念ながら「見ない方がよい映画」ではないかと。
何より、一作目の核ともいえた宮崎あおいの不在が痛すぎる。市川由衣の力不足は『ROUGH』で既に明らかだったんですが、こちらでは一作目で宮崎が作り上げたハチというキャラを殺してしまい、かといって自分なりの新しいハチを提示することも無く終わってしまいましたね。
東京には、全国から若い子が集まっています。その若い子たちは、決してみんながみんな「東京で一旗あげてやる」みたいな野望を持っている訳ではないんですが、動機はどうであれ、一旦あの大都会に住み着いてしまえば、あそこで生き続けるために、みんな頑張らなければいけません。
身を持ち崩すのは簡単なんです、東京では。いくらでも誘惑もあるし、非道徳的なことに手を出すのも容易な街です。
でも、そうはせずに、自分のできることを、みんなが自分なりのプロ意識を持ってこなしていき、それで生活している若い子たち。
前作は、そういった若い子たちにとって、共鳴できる部分が多い作品だったのではないかと(俺はもうそういう歳じゃないけどね)。そして前作の持つそういった要素は、ハチというキャラに依った部分が多かったんではないかと。
そのハチを、市川が完全に殺してしまいました。そして、前作の持っていたそういう要素も死にました。
『シャーロットのおくりもの』
動物の擬人化映画が大好きなんで、これは欠かせません。
豚の映画というと、ジョージ・ミラーの『ベイブ』ですが、これを『ベイブ』の二番煎じと言う無かれ。
むしろ『ベイブ』がこちらの(原作の)影響を受けてるんじゃないのか、と。
この原作の絵本は俺も子供の頃に読んだ記憶があるけれど、子供向け絵本で、死(と生)をきっちり捉えたものとして、評価されているもののようです。
話そのものは当然その絵本が原作なので、子供向け。でもまず声の出演が超豪華。ジュリア・ロバーツ、ロバート・レッドフォード、スティーヴ・ブシェミ、キャシー・ベイツ。加えてダコタ・ファニングタソだし、これだけのネームバリューを持つ人が揃ってるんだから、子供連れのおとーさんおかーさんも楽しみましょう。