現代音楽

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 Soe'sという新しいバンドが広島で初ライヴを行なったのを見に行きました。
 音楽は、いわゆるロック系のインプロ。ただ、そこにマリンバが加わることで、フリージャズやアヴァンギャルド・ロックの世界に、現音の風が吹き込んだものになります。
 中心となっているのは梶山シュウさん。偶然にも家の近所のショットバーの飲み友達二人がそれぞれにシュウさんとかかわりがあって、その二人のおかげでもったいなくもマイミクにしてもらったり、先日はライヴ会場でお話する機会をもつこともできました。吉祥寺でのキキオンライヴでお見かけして以来のファンとしては感激しきり。

 で、そのシュウさん、キキオンのサポートやら、先日、伝説のギタリスト石間秀樹(ex.フラワートラベリンバンド)広島公演での演奏などを見聞きする限りでは、その独特な声と変幻自在のフレットレスベースを駆使し、若干ロック寄りながらもユニークな無国籍音楽を追求している人、というイメージがあったんですが、mixi日記や公式サイトなどを読むと、どうやらインプロが大好きなようで。そういえば前述の石間さんのライヴでも、最後に二人でやっていたセッションは完全なインプロでしたなぁ。

 ライヴは、安佐南区民文化センターという公共の施設で行なわれました。この建物はまぁ公民館にホール設備をつけたような感じのものですが、ライヴはそのホールではなく、施設入り口のロビーのようなところで行なわれました。そういう設備面の問題もあり、また、ユニットとしての初お披露目だったということもあり、無料だったのはうれしいところです。
 内容的には、作曲されたもの4割、インプロ6割とおっしゃっていましたが、曲によっては完全なインプロであろうと思われるものも。ライヴの中でシュウさん自身が、
「100%インプロオンリーだと、集まったお客さんを満足させられるだけのものを演るためにはかなりの技量が必要」
と言っていましたが、いずれは100%インプロだけで勝負できるユニットになりたい、という秘めた意思を感じさせましたね。

 メンバーのうち、梶山シュウさんについては、改めて書きません。ライヴでも他のメンバーに対する仕掛けが一番多かったのはシュウさんでした。このユニットの首謀者であることは間違いないでしょう。
 サックスの藤井さんという人は、主に広島のジャズシーンで名前が知られている人のようですが、HFMというJFM系列の広島のFM局でパーソナリティなども勤めているなど、結構多角的に活動されているようです。ラジオのパーソナリティをやってるってことは、しゃべりもいけるんでしょうが、今回はしゃべりに関してはほとんどシュウさんが一人でやっていましたね。ジャズ系の人ということで、インプロに関してはこちらもかなりの引き出しをお持ちのようで、シュウさんとのやり取りは楽しめました。ただ、これは二人ともに言えますが、まだお互い遠慮があるのか、例えて言うなら、シュウさんも藤井さんも手足を振り回して暴れてはいるんですが、どこか冷静に、振り回した手が誤って相手に当たってしまわないように気を遣いながら暴れている、というか、横目で相手が暴れているのを冷静に見ながら暴れているというか。
 いや潰しあいをしろとかいうんではなく、もっとこう、横目なんかで見なくても、相手に手が当たらない範囲を体が覚えていて、好き放題暴れても相手に当たらないというか。それこそがまぁつまりは、ユニットとしての熟成度が高まるということなんでしょうか。
 二人目のベース、木元さん。このユニット、ツインベースなんですね。シュウさんの構想が、最終的にどういうものを目指しているのかわかっていない上で書きますが、この日のライヴでのツインベースは、一人が黙々とリズムキープに徹し、もう一人はその上で自由奔放に動き回る、という形でした。この点はちょっと残念というか、まぁこっちの勝手な思い込みっちゃそうなんですが、というのもこのイベント自体、『変拍子と即興』を謳っていただけに、インプロと同じくらい重要なテーマとして『変拍子』が挙げられていた訳ですが、ベース二人による変拍子というと、ダブル・トリオ時代のクリムゾンにおけるトレイ・ガンとトニー・レヴィンの二人による高密度な絡みが思い起こされて、ああいった、ベーシストAとベーシストBがそれぞれ全く異なるリズムを奏でつつ、全体を通して聞くとそれが複雑に絡み合い、曲として成立している、というようなものを想像していただけにね。まぁそういうことをやろうとすると、かなりアレンジを詰めないといけないわけで、相対的にインプロの比率が下がってしまいかねませんから、それはそれで困るというか。
 で、この木元さんという人は、実はシュウさんの教え子らしいんですが、そのあたりの力関係も微妙に作用しているのか、シュウさんと藤井さんのやりとりをひたすらボトムから支えていて、自分から仕掛けるところがあまり見受けられなかったのが、傍で見ている分にはちーと気の毒ではありました。まぁ年齢的にも若いし、インプロ主体の音楽っていうと、センスやテクニックはもちろんのこと、それに加えて「経験」が大きくモノを言うだけに、力関係云々を別にしても年齢的に一番若い木元さんが不利になるのは、やむを得ないかもですが。
 で、マリンバ担当の荻原さん。ぐぐってみたら、普段は広島ウインドオーケストラという広島で一番大きな吹奏楽団で活動されているほか、パーカッションアンサンブルやピアノとパーカッションのデュオなど、打楽器をメインにした音楽を色々探求されているようです。基本的にクラシックの人なんで、インプロという部分に於いては四人の中では一番不利な気もしますし、実際、木元さんのベースが形作る土台の上でシュウさんと藤井さんが暴れまわり、荻原さんのマリンバがその周囲を飾り立てていく、というのが、少なくとも今回はこのユニットの基本形であったように思えます。とはいえ、その「装飾」をマリンバという楽器でやっているところこそがこのユニットをユニークたらしめている由縁でもありまして、最初に書いたように、ロックやジャズだけでなく、現代音楽的な理知というか、毛並みのよさというか、やっぱクラシックやってる人は違うねぇというか、そういう色をこのユニットに与えているだけに、重要な役どころではあります。今後荻原さんがそれこそ経験を積んで、シュウさんと藤井さんの両者と対等に絡み始めたら、それはそれで面白いことになりそうですが。

 先にも書きましたが、会場について。
 これは意図してわざとやったことなのかどうなのかわかりませんが、前述のとおり、公民館のようなところでやる地域密着型音楽イベント、という形だったため、聴く側が、なんというか、かなり特殊な状況でした。
 具体的には、客席の半分以上が地元のおじいさん、おばあさん。公民館でやるサロンコンサートということで、生涯学習の一環としてメモ帳片手の高齢者、とかそういう感じの人がいたり、かと思えば小学校高学年のお姉ちゃんと低学年の弟を連れたお母さんとか。つまりおおよそこの種の音楽を聴きに来る人たちとは(一般的に言って)層が違うというかなんというか。
 いや、お年寄りがROVOを聴いたって良いぢゃあねぇか、とか、二人の子持ちのお母さんがアルタード・ステイツを聴いたって良いぢゃあねぇか、とか、小学生のおにゃのこがジョン・ゾーンのペインキラーを聴いたって良いじゃあねぇか(←良くない)とかいう意見もあるでしょうが。
 っていうのも、いわゆるインプロ主体のライヴって、場の空気でどんどん音楽が変化(発展もしくは破壊)されていくものなんですね。
 これまでにも、聴衆に緊張を強いるかのようなハードなセッションや、逆に心地良いゆったり感を与えてくれるようなセッション、さらには、思わず声を出して笑ってしまいそうになるほど楽しげなセッション、それらを混ぜ合わせたセッションを体験してきました。そしてそういった「場の空気」は、もちろん演奏者の間にあるものなんですが、一方で客席の醸し出す部分もそれなりに影響していると思うんです。聴衆の思い上がりかもしれませんが。
 で、そういう観点からこのSoe'sのライヴを顧みると、客席側からステージへのレスポンスという点で、明らかにこう、何か欠けがあったというか。聴衆がこの種の音に馴れていないということもあって、楽しみ方というか聴き方がわからず戸惑ってしまっていたというか。演奏者側にしてみれば暖簾に腕押しだったのではないか、と。
 まぁそのあたりは演奏者側もある程度考慮済みで、『局面即興』と称して、客席から任意に人を選んで、その人たちに音階を指定してもらい、それらの音階だけを使ったインプロをやる、という、ある種参加型ゲームのような手段で客席を巻き込んだやり方で、この時だけは客席に一様に緊張感が漂ったような気がしました。
 とはいえ一時間のライヴの中の10分にも満たない時間の話であって、やっぱりこのユニットのお披露目として、果たしてああいう場がふさわしかったのかどうか、というと、これは疑問に思わざるを得ません。ライヴの中でシュウさん自身、
「我々メンバーはそれぞれプロの演奏家として他で活動する一方で、こういう(フリー・インプロなどという)お金にならない音楽をやって楽しんでいる」
・・・と、多少の自虐も交えていわれていましたが、ここ広島という街における梶山シュウという人の知名度を考えると、金を取って市内のライヴハウスなどでやっても十分に人も集まったであろうし、そのほうがよりよいものになったように思えてなりません。単に俺が不自然に感じただけかしらね。

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タグ : Soe's 梶山シュウ 藤井政美 プログレ 現代音楽

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