デスモンド・チャイルド

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巨漢のロック・シンガー、ミートローフの"Bat Out Of Hell"シリーズ、日本語では『地獄のロックライダー』シリーズですが、その最新作です。

<ここから昔話>
第一作は77年。世間的にはオサーンの部類に属する歳になった俺も、さすがにこれはリアルタイムでは聴いていません。初めて聴いたのは高校2年生の時で、まだLPレコードでした。きっかけは、何かの雑誌で読んだ「ロック・オペラというジャンルがあるとすれば、その代表作は『オペラ座の夜』や『Tommy』と並んで、この作品が挙げられる」と紹介されていたこと、そしてプロデューサーとコンポーザーでジム・スタインマンの名前があったことですか。
そう、ミートローフの名前は知らずとも、ジム・スタインマンの名前は知っていました。というのも、あまり大声で言えないけれども実は個人的には生涯ベストムービーの一本と言っていい映画『ストリート・オブ・ファイヤー』(84年アメリカ/ウォルター・ヒル監督作品/出演:マイケル・パレ、ダイアン・レイン、ウィレム・デフォー、リック・モラニス)の中で使われる、テーマソングと言っても良い二曲を手がけた作曲家だったからです。
で、実際に聴いてみると、『地獄のロックライダー』は、先に挙げた『オペラ座の夜』や『Tommy』なんかと同種のもの、として捉えるには少々無理があるんじゃないかと思いました。
『オペラ座の夜』も『Tommy』も、それぞれQueen、The Whoというバンドのオリジナル・アルバムとして、彼ら主体で作成されたものであり、さらに、アルバム自体はコンセプト・アルバムではあるけれども、彼らのディスコグラフィを俯瞰するにあたり、重要な位置を占めてはいるものの、決してバンドの歴史の中で突出して異色なもの、という訳ではありません。
一方の『地獄のロックライダー』ですが、これは「ミートローフ」というシンガーのアルバムという体裁をとっているものの、実際のところはジム・スタインマンがミートローフという素材を使って作った、「作曲家の作品」という色彩が強いんですね。
アルバムの中身は、まさに「ロック(の楽曲と演奏・唱法を使った)オペラ」。「オペラ的手法を取り入れたロック・アルバム」ていうよりも「ロック的な音で展開されるミュージカル」というか。この後、ジム・スタインマンがブロードウェイや映画音楽にその才能を発揮するのもうなずけます。

この作品、日本ではさして大ヒットはしませんでしたが、アメリカ、ヨーロッパでは大ヒットでした。にも関らず、それ以降はこれほどのヒット作には恵まれていません。プロデューサーや作曲にジム・スタインマンを迎えた作品もいくつかありながらも、内容・セールス共にこれを越える作品は生み出せないままでした。
で、1993年、確かまだ俺が社会人になってそれほど時間が経っていなかった頃ですが、満を持して発表された『地獄のロックライダーII~地獄への帰還』をリリース。これも一作目に劣らぬ傑作でしたが、何より驚いたのは、その曲調はもちろん、音の手触りも含めて前作から15年以上経っているのに、悪く言えば全く進歩がないところ。まさに『地獄のロックライダー』の世界を90年代に蘇らせた、というか、この音が90年代である必然性ゼロだったのには、当時大笑いしました。自家用車のCDチェンジャーに常備していたなぁ。懐かしす。
</昔話>

まあミートローフといえば『地獄のロックライダー』、そして『地獄のロックライダー』といえばジム・スタインマンという、この取り合わせは、俺を含めた一部の人には無敵なんですな。
そして今年、なんと2006年も暮れようかという、この21世紀の世に、まさか『地獄のロックライダー』の新作が出てこようとは、さすがに思ってもいませんでした。
国内盤はまだのようですが、タワーレコードで既に店頭に出ていた輸入盤を見たとき、一瞬気を失ってしまい、あとのことはよく覚えていませんで、気がついたら家に帰ってヘッドフォンを掛け、大音量で聴いている自分が・・・

Bat out of Hell III: The Monster Is Loose

  1. The Monster Is Loose
  2. Blind As a Bat
  3. It's All Coming Back To Me Now
  4. Bad For Good
  5. Cry Over Me
  6. In The Land of the Pig, The Butcher Is King
  7. Monstro
  8. Alive
  9. If God Could Talk
  10. If It Ain't Broke Break It
  11. What About Love
  12. Seize the Night
  13. The Future Ain't What It Used To Be
  14. Cry To Heaven

ジャケットはいつもの感じで、蝙蝠の化け物が前二作より大きめに描かれ、前作ではその蝙蝠にウェスタン・ラリアートをかまそうとしていたロックライダーさんが、今回は短剣を手にして蝙蝠と対峙しています。
邦題はどうなるんでしょうか。多分『地獄のロックライダーIII』になるのは確実として、The Monster is Looseは・・・「獣は解き放たれた」とでもするか。「放たれた獣」・・・ちょっとセンスないな。

◆ジム・スタインマンの不在

ところで、このジャケットを良く見ると、"Song by Jim Steinman and Desmond Child"と記載されています。
ここでデスモンド・チャイルドがジム・スタインマンと同等に扱われているのを見て、意外に思う人もいるかもしれません。俺も意外でした。さらにライナーノーツを見ると、なんとアルバム全体のプロデューサーとしてクレジットされているのもデスモンド・チャイルドなんですね。
つまり今回の『地獄のロックライダー』は、デスモンド・チャイルドがメインのサウンド・クリエイターであり、ジム・スタインマンはあくまでも楽曲提供者にしか過ぎないわけです。
ただ、このシリーズをここまで主体的に牽引してきたのがジム・スタインマンであることは疑いのない事実であり、ライナーノーツの裏表紙にも
"FOR THIRTY YEARS OF FRIENDSHIP AND INSPIRATION,BAT OUT OF HELL III IS DEDICATED TO JIM STEINMAN"
と書かれてもいます。
実際はミートローフとジム・スタインマンの間で、『地獄のロックライダー』の商標?を巡って一悶着あったようですが。(Bat out of Hell III: The Monster Is Loose - Wikipedia, the free encyclopedia)
察するに、ミートローフ側が、もうそろそろまた『地獄のロックライダー』やろうぜ、とジム・スタインマン側を突っつき続けて幾年月、『地獄のロックライダー』の名を冠するに足るクオリティの曲が揃わなかったんでしょうか、なかなか重い腰を上げないジム・スタインマンに痺れを切らせたミートローフがデスモンド・チャイルド一派を起用し、見切り発車でアルバムの製作に入ったものの、『地獄のロックライダー』の商標権を押さえていたジム・スタインマン側がこれに反発、訴訟問題に発展してしまった、と。
最終的に本作のみミートローフ側が『地獄のロックライダー』の名前を使ったアルバムを出すことをジム・スタインマン側が了承して両陣営で手打ちがされ、ジム・スタインマンもやむなく何曲か既発表曲を提供した、というところでしょうか。
ちなみに全14曲中、ジム・スタインマンのペンによる曲は7曲(3、4、6、10、12、13、14)。これら7曲は全て、ジム・スタインマン一人の作詞・作曲によるものです。
対してデスモンド・チャイルドの曲は6曲(1、2、7、8、9、11)。興味深いのは、この6曲全て、誰かとの共同作曲という形をとっていることです。
ライターとして起用されている主な面子は、

ニッキー・シックス
言うまでも無くモトリー・クルーの音楽面でのリーダー。モトリーの代表曲の殆どはこの人のペンによる曲(いやペンを使って曲を作っているのかどうかぁゃιぃですが)。
ジョン5
マリリン・マンソンのバンドのギタリストで、自身のソロもあり。
ジェイムス・マイケル
作曲家というよりもアラニス・モリセットのプロデューサーとしての方が有名かも。モトリーやジョン5のプロデュースもやってるから、そういう人脈もあるんでしょう。
ダイアン・ウォーレン
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!デスモンド・チャイルドと並ぶ80年代後半~90年代のアメリカのチャートを荒らしまわった、ロッカ・バラード専門作曲家!エアロスミス(アルマゲドンの主題歌)、シカゴ(ルック・アゥエイ)、マイケル・ボルトン(タイム・ラヴ・アンド・テンダネス)、スターシップ(マネキンの主題歌)・・・ほかボン・ジョヴィやハート、バッド・イングリッシュといった売れ線系ポップ・ロック・バンドからホイットニーやセリーヌやベリンダ姐さん、シェール婆さんなどの女性ヴォーカル系に至るまで、幾多の名曲を提供しているおばはんですね!
ホリー・ナイト
さらにキタ━━━━━━( @@)━━━━━━!!!!!デスモンド・チャイルドにダイアン・ウォーレンにホリー・ナイト・・・この面子は、こういった文脈で語れる音楽においては、最強ともいえる取り合わせじゃね?
マーティ・フレドリクセン
エアロスミス復活に、音作りの部分で多大な貢献をしたプロデューサー。いうまでもなく復活エアロにはボブ・ロックと共に、デスモンド・チャイルドやダイアン・ウォーレンも大きく関っていましたね。
いやーすごいメンバーですね。『地獄のロックライダーII』の時に、まったく恥ずかし気もなく15年以上前のサウンドそのまんま90年代に出してきたのにびびりましたが、80年代~90年代のヒットチャート常連コンポーザーが大挙して、産業ロック全盛期の音を21世紀に出してくるとはいやはや。
デスモンド・チャイルド自身、優秀な作曲家ではあるんでしょうが、それよりも優秀なプロデューサー(むしろ優秀なサウンド・コーディネイターとでも言ったほうが良いかもね)であり、曲のクオリティを高めるために積極的に外部ライターの導入を図っているとも言えるし、さらに言うと、ジム・スタインマンの作る強い個性を持った楽曲群だけで一枚のアルバムを作ってしまうと、さすがに新しいファン層の獲得は難しい、という判断もあったでしょう。かといってデスモンド・チャイルド単独でジム・スタインマンの楽曲群に対抗し得る楽曲群を産み出せない、という判断もあったかもしれませんね。
クリエイターとしての自我よりも、そういうバランス感覚を優先させてしまえるのが、デスモンド・チャイルドらしいとも言えますがね。だからこそ80年代後期~現代に到るまで、アリス・クーパーやエアロスミスのようなビッグ・ネームからも信頼され、レコード会社が大金掛けて一発売り出したい中堅どころのアルバムでも重宝されている所以ともいえましょう。

1曲目、『地獄のロックライダー』シリーズらしいおどろおどろしいイントロに導かれたかと思うと、いきなりメタリカとグランジによって普遍化された現代ヘヴィメタリック・ギターサウンドが炸裂し、前二作との違いをはっきりと感じさせます。
ただ、決してアルバム全体がこの曲の手触りで統一されている訳ではありません。そりゃそうだ、ジム・スタインマンの曲をこんな調子で演られちゃたまらんわい。

2曲目、1曲目では欠けていた『地獄のロックライダー』で常に重要な役割を演じてきたピアノの音が流れ出し、ほっとします。
曲の盛り上げ方、大仰なコーラスの使い方などはジム・スタインマンの音を忠実になぞっており、決して物まねとかではなく、デスモンド・チャイルドが過去二作、そしてジム・スタインマンに対して大いなるリスペクトを払っていることが窺い知れる音になっています。
ちなみに、この曲におけるミートローフの"Love is blind"の"blind"の"L"の発音、いかにも普通の人より舌が長そうな(もしくは唾液の分泌量が多そうな)、べたついた「ぶいーんど♪」を聴くと、「あぁミートローフだ、ロックライダーだ!」と思って嬉しくなってしまうのは俺だけではないでしょ。

3曲目はジム・スタインマンの曲。オリジナル・シンのアルバムに提供した曲のカバーらしいんですが、残念ながら俺はオリジナルは未聴。こういうのを聴くとだなあ、またこのオリジナルを聴きたくなっちゃうじゃんか!
また、この曲は、かのセリーヌ・ディオンもカバーしており、こちらはシングルにもなっていたようです。残念ながらこちらも未聴。うーん。
曲調は当たり前ですがジム・スタインマン節全開、デュエットによる大袈裟極まりないバラードです。

続く4曲目もジム・スタインマンの曲で、出た当初『続・地獄のロックライダー』とも言われていた彼名義のソロアルバム『Bad For Good』が初出。イントロのギターはクィーン的なギターハーモニーだと思ったら、ブライアン・メイが弾いてました。米英ロック・オペラの大家が手を組んだというシチュエーションに萌えますね。

5曲目はダイアン・ウォーレンおばさん単独作曲のバラード。今回新たに参加したライター陣の顔ぶれを見た時点で想像はできるんですが、やっぱりバラードが多いですねえ。
6曲目は再びジム・スタインマン。バットマンのミュージカル用に書いた曲だったようですが、過去二作でも必ずあった、「ダークなメロディでアルバムのドラマ性を盛り上げる曲」の役割を演じています。
この曲ではゲスト・ギタリストで、スティーヴ・ヴァイが参加してるんですが、先のブライアン・メイと違い、ヴァイ独自の爬虫類系の変態ソロが炸裂しているわけではありません。

7曲目は8曲目の前奏曲ともいえる短めの曲。オペラ調のコーラスでおどろおどろしい雰囲気を盛り上げ、八曲目に繋げます。
そして8曲目。この流れはアルバム中の白眉ともいえる部分で、デスモンド・チャイルドを始めとしたライター陣が渾身の「俺達の新たなる『地獄のロックライダー』」を作ったとも言えます。
オペラチックなコーラス、自己主張の強いピアノ、丸っこいギターサウンド、必要以上に曲を大仰に盛り上げるストリング&ブラスサウンド・・・まさにスタインマンと過去二作のスタイルに則って作った名曲といえましょう。

9曲目、これもデスモンド・チャイルドのペンです。前曲で思いっきり盛り上げたのに対し、こちらは比較的静かな感じで始まります(サビではやっぱり大袈裟に盛り上がりますが)。
10曲目は再度ジム・スタインマンの曲に戻ります。映画のサントラ用に提供した曲のようですが、これも6曲目同様に、どちらかというとヘヴィ&ダーク寄りなメロディで、次につなぐ感じです。

11曲目、デスモンド・チャイルドの曲。これはもう、7~8曲目と同様、アルバムの中核を成すキラーソングですね。
さわやかなギターのカッティングに続いて、いかにもアメリカンロックらしいピアノが入ってきて、明るくアップテンポな歌メロが入り、90年代からミートローフのツアーにデュエット要員として帯同しているパティ・ルッソとのデュエット。
存在感たっぷりのピアノ・サウンド、対照的に控えめな、丸っこいギター・サウンド、そして迫力のあるパティの女声ヴォーカル、そこに暑苦しいミートローフのヴォーカルが合わさり、実に『地獄のロックライダー』的な世界が展開されます。メロディ、アレンジとも申し分ないですね。
12曲目、ジム・スタインマンがミュージカル用に書いた曲。いかにもミュージカル的というか劇伴音楽的でドラマティックなメロディ、かつシンフォニックなアレンジが施されています。9分という、アルバム中最長の曲でもあり、組曲風に曲調が何回か変わり、9分という長さを全く感じさせないところは、ジム・スタインマンの力量を改めて感じさせるものであると共に、このスタインマン調全開の曲をいかにもそれらしく仕上げるのが嬉しくてしようがない、というデスモンド・チャイルドの顔が目に浮かぶようです。

アルバムは12曲で終わってもいいんじゃないか、と思えるくらいの盛り上がりを見せる12曲目に続いて、13曲目と14曲目、共にジム・スタインマンの、わりと静か目の曲を二曲続けて、聴き手のクール・ダウンを図ってくれます。

以上トータル14曲、ジム・スタインマン不在で『地獄のロックライダー』を作る、という、ある意味危険な賭けに出たミートローフですが、デスモンド・チャイルドによる過去二作を十二分に尊重した仕事振りは、ジム・スタインマン不在の穴を埋めて余りあるものだと言えましょう。
個々の楽曲を見ると、例えば1作目の1曲目や2作目の1曲目という、アルバムを聴き始めた者全てを導入部でノックアウトしてしまうような超強力な楽曲がありましたが、今回はそこまでぶっ飛んだ超弩級の名曲がないのが問題といえば問題ですがね。
でもデスモンド・チャイルドが主導権を握ったことによって『地獄のロックライダー』がクォリティダウンした、と言われないよう全力を尽くしたとも思える超力作。既発表曲とはいえジム・スタインマンの曲を織り交ぜることで過去二作と同様の空気を醸し出すことにも成功しており、少なくとも過去二作が好きな人や、80年代後半から90年代にかけてのモトリー・クルーやボン・ジョヴィ、大きな声では言えないが実は産業ロック路線のエアロスミスやハートなどが密かに好きな人などは、買って損はないどころか十分満足できるものだと言えましょう。てか買え。

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タグ : ミートローフ ジム・スタインマン デスモンド・チャイルド 地獄のロックライダー

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